夕暮れの川沿いの町並み。築古戸建てを売るか持ち続けるか、出口を考えるイメージ

「このボロ戸建て、このまま持ち続けるべきか、そろそろ売るべきか」—— ある程度の期間、物件を保有した投資家なら、一度は必ずぶつかる問いです。

不動産投資は、物件を買って家賃収入を得るだけでは終わりません。 購入した物件を最終的にどう手放すか、その「売り方」まで設計して初めて、 一つの投資が完結すると言えます。

この記事では、築古戸建て投資における出口戦略の基本原則と、 実際に「売るか」「持ち続けるか」を判断する基準を解説します。 格安中古物件投資そのものの基本を先に押さえたい方は、 空き家問題を「資産」に変える。格安中古物件投資入門 もあわせてご覧ください。

なぜ「出口」まで決めて投資すべきなのか

不動産投資と聞くと、多くの方は「家賃収入」つまりインカムゲインを得ることをイメージするでしょう。 弊社が推奨する投資戦略も、基本的にはインカムゲインをメインにご提案しています。

しかし賢い投資家は、物件を購入するまさにその瞬間から、もう一つの利益について考えています。 それが「売却益」、いわゆるキャピタルゲインです。 物件の売却益をいかにして最大化するかという計画——それが「出口戦略」です。

なぜこの出口戦略がそれほどまでに重要なのでしょうか。その答えは、 不動産を売却して得た利益にかかる「税金」に隠されています。

「5年の壁」譲渡所得税の仕組み

物件を売って利益(譲渡所得)が出た場合、その利益には「譲渡所得税」という税金が課せられます。 そしてこの税率は、物件を売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えているかどうかで 驚くほど大きく変わります。

区分 税率の内訳
短期譲渡所得(所有5年以下)所得税30%+住民税9%+復興特別所得税=合計 約39%
長期譲渡所得(所有5年超)所得税15%+住民税5%+復興特別所得税=合計 約20%

(出典:国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」「長期譲渡所得の税額の計算」)

図解:「5年の壁」を境に譲渡所得税率は約2倍変わる

約39% 約20% 所有5年以下 (短期譲渡所得) 所有5年超 (長期譲渡所得)
出典:国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」「長期譲渡所得の税額の計算」

例えば、購入した物件を売却して300万円の利益が出たと仮定しましょう。 所有期間が4年11ヶ月の時点で売却してしまった場合、税率は約39%ですから、 「300万円 × 39% = 117万円」の税金がかかります。

一方、あと1ヶ月だけ我慢して、所有期間が5年1ヶ月の時点で売却すればどうなるでしょうか。 税率は約20%に下がりますから、「300万円 × 20% = 60万円」で済みます。 その差額は実に57万円。たった1ヶ月、売るタイミングが違うだけで、 手元に残るお金がこれだけ変わってしまうのです。

原則は「5年保有→長期譲渡所得のタイミングで売却」

このため、格安中古物件投資における基本的な出口戦略は、非常にシンプルです。

「購入した物件は、最低でも5年間は保有し、長期譲渡所得の税率が適用される
タイミングで売却を検討する」

これが、利益を最大化するための大原則となります。 ただし、これはあくまで原則です。すべての物件を機械的に5年で売却すべき、 というわけではありません。物件の個別の状態や、その時々の市場の状況に応じて、 柔軟に戦略を使い分ける視点がとても大切です。

売るか持ち続けるか——判断基準の考え方

では、5年という節目を迎えたとき、実際に「売る」か「持ち続ける」かは 何を基準に判断すればよいのでしょうか。基本となるのは、建物の状態です。

図解:建物の状態から見る出口の判断基準

建物の状態を確認 状態が良好・大規模 修繕の心配が少ない 損傷が激しく大規模 修繕費用が近い将来必要 10年以上の長期保有も選択肢 5年の節目で積極的に売却を検討

建物の状態が比較的良好で、大規模な修繕の心配が少ない優良物件であれば、 無理に売却せず10年以上長期で保有し続ける、という選択も十分に考えられます。 安定した家賃収入を生み出し続けてくれる「金のなる木」を、 みすみす手放す必要はありません。

一方で、建物の損傷が激しく、近い将来、大規模な修繕費用がかかることが 予想される物件は、5年という節目で、積極的に売却を検討した方が賢明でしょう。 物件の状態を見極める視点は、 ボロ戸建てのリフォーム費用の考え方|どこまで直すのが正解か買ってはいけない築古戸建てチェックリスト|プロが見るポイント で紹介している「空き家期間」の考え方も参考になります。

このように、物件の個別の状態や市場の状況に応じて柔軟に戦略を使い分ける視点と、 「5年の壁」という税制上の知識があるかどうかで、最終的な決断の質は大きく変わってきます。

インカムゲインを土台に、キャピタルゲインは"上乗せ"

出口戦略を考える上で欠かせないのが、「インカムゲインを土台に、 キャピタルゲインはあくまで上乗せの利益」という考え方です。

弊社の投資の根幹は、あくまで毎月の安定した家賃収入(インカムゲイン)にあります。 物件にもよりますが、5年から6年という期間で、投資した元本を家賃収入で回収するのが 一つの目標です。実際の物件では、投資回収期間が約5.9年、約6.2年になった実例もあります。 具体的な計算式や実例の内訳は、 築古戸建ての利回り計算方法|表面利回りと実質利回りの違い で詳しく解説しています。

つまり、極端な話をすれば、6年後にその物件の価値がたとえゼロになったとしても、 この投資は、すでに「勝ち」状態になっているのです。 インカムで足元を固め、キャピタルゲインはあくまで上乗せの利益と考える—— この堅実なスタンスこそが、不確実な未来を乗り切るための賢明な戦略です。

契約書にサインする手元。築古戸建ての売却契約のイメージ

「売却失敗」リスクと損切りという視点

5年後に売却しようと計画していても、未来のことは誰にも分かりません。 不動産市況の悪化や物件の劣化が進み、資産価値が大きく下落しているかもしれない。 その結果、購入した時よりも安い価格でしか売れず、投資全体がマイナスに終わってしまう—— これは、キャピタルゲインを狙う上での最大のリスクだと言えるでしょう。

このリスクへの向き合い方は、「そもそも、売却益を最初から過度に期待しない」という マインドセットを持つことです。前述の通り、インカムゲインですでに元本を回収できていれば、 この投資はすでに「勝ち」状態にあります。 もし、どうしてもインカムゲインが安定しない、あるいは極端な値下がりが目に見えているのであれば、 惜しいかもしれませんが、安い価格での売却=損切りも視野に入れましょう。

投資とは長期で行うものであり、百戦百勝はあり得ません。 「利益を狙いにはいくが、全力でやっても損することがあるかもしれない」と 考えておくことも、出口戦略の一部です。具体的な失敗パターンと回避策は、 ボロ戸建て投資の失敗例7選|築古戸建てで後悔しないための回避策 でも紹介していますので、あわせてご覧ください。

経費計上と専門家との連携

せっかく家賃収入を得ても、毎年かかる固定資産税や火災保険料、 そして物件を売却した時に課せられる譲渡所得税など、出ていくお金も少なくありません。 これらの支出を正しく理解し、計画に織り込んでおく必要があります。

なお、リフォームにかかった費用や、不動産会社に支払った仲介手数料などは、 物件の取得費として、売却益を計算する際に利益から差し引くことができます。 こうした経費の領収書は、必ず保管しておきましょう。

※税金の計算方法や適用要件は個々の状況によって異なり、税制も毎年変わります。 実際の申告にあたっては、必ず税理士など専門家にご確認ください。

税金の世界は非常に複雑で、毎年税制も変わっていきます。 投資家がそのすべてを完璧に把握するのは現実的ではありません。 ある程度の規模になったら、必ず不動産に強い税理士の先生と顧問契約を結び、 専門的なアドバイスを受けることを強くお勧めします。

まとめ

築古戸建ての出口戦略は、「最低5年間保有し、長期譲渡所得のタイミングで売却を検討する」 という原則が基本になります。ただし、建物の状態が良好なら長期保有、 損傷が激しいなら5年の節目で売却検討というように、物件ごとに柔軟な判断も必要です。

インカムゲインを土台に、キャピタルゲインはあくまで上乗せの利益と考えておけば、 たとえ売却が計画通りにいかなくても、投資全体としては「勝ち」を積み上げていくことができます。

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